970905-2 「人気上々下山村のパン工房」



 「パンづくりは自己満足ですね」「満足するためにやっているようなものかな」。パンを焼きながら横沢晶子さんはにっこりと微笑む。
 
 晶子さんは東加茂郡下山村大字宇連野字物見石に、原木工芸家である夫の唯史さんと三人の子ども(希那ちゃん、太くん、蕗ちゃん)らとともに住む。
 
 九十四年春、横沢一家は村役場から車で三十分ほどかかる、この地に移り住んだ。使い捨ての現代の浪費生活に疑問を抱き、自給自足の生活を目指しての転居だった。八十八年、二千平米の土地を購入。週末に通い、ほとんど一人でログハウスを建設した。
 
 木そのものの良さを活かすから意味があるという唯史さんは「原木工房」を営む。間伐材や小枝などを使い、家具や小物類を製作している。
 
 木への想い、暮らしぶりを聞き、世界で一つの作品を作り上げるため、注文を受けた方には必ず合うことにしている。横沢さんの木へのこだわりがここにある。「今ではパン屋さんの方が収入がいいね」と唯史さんは笑う。
 
 趣味を活かし、パン屋さんをと考えていた晶子さん。昨年の七月頃から自宅の庭で、基礎工事が始まり、今年五月二十四日、念願のパン工房が完成した。
 
 食パン三種類、菓子パン十二種類、クロワッサン六種類を作っている。人気のメニューはクロワッサンの「ぐるぐるパン」だ。レーズン、クルミ、チーズなどの種類がある。
 
 「やるなら徹底して作りたかった」という晶子さんの焼いたパンは、人気上々。子どもの迎えがてら、村内の三十〜四十軒に配達している。もっと作ってとの声もある。一日八十個前後作っているがこれ以上、増やすのは難しいかな、とうれしい悲鳴も。
 
 順調に見えるパンづくりにも困難はあった。予定していた井戸水の鉄分が多く、あきらめかけたことも。今使っている湧き水は、保健所の審査で優良との認可を受けたものだ。
 
 「自己満足できないのに売れるのは悲しい。もちろん、今は納得していますよ」「いずれは天然酵母を使ったパンづくりをしてみたいです。かみしめればかみしめるほど、おいしいパンになるんです」とパンづくりへの夢は尽きない。(藤原久道)


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