
司会・藤原久道 豊田市北部、の保見ヶ丘団地には、日系ブラジル人を中心に約三五〇〇人の外国人が住んでいます。全人口が約一〇〇〇〇人ですから、三五%を占めています。ゴミ捨てのマナーや騒音などの問題で、日本人との間に問題が生じています。
そうした中、地元住民自らが外国人との共生を目指した活動に取り組んでいます。保見ヶ丘を明るくする会、日本語教室などがそうです。
今回は、ボランティア活動に携わっている皆さんや外国人住民の方にも出席して頂き、
保見団地の現状と、住民が望む団地の将来像を語って頂くことにしました。
松井正衛(保見ヶ丘を明るくする会顧問) 団地の住環境改善を目的に「保見ヶ丘を明るくする会」は活動してきました。生活マナーを知ってもらうことが重要だと思います。
この地域から市議会に議員をという話が出て、今春四月、保見ヶ丘の現状を知ってもらうことと、問題解決への取り組みを目指し、市議会議員選挙に立候補しました。現在、市会議員として、問題解決に取り組んでいます。
今までは市当局も自治振興室、市民課、保険年金課という具合に、外国人窓口がバラバラでした。今年からこれらの各課の仕事の調整のために国際課が新設されました。一歩前進したと思っています。
いろいろ問題もありますが、外国人との共生がうまれつつあると思います。外国人にも出来るだけ長く、この保見団地に住んでいただき、愛着を持って頂きたいと思います。
関八代重(保見ヶ丘国際交流センター設立準備会代表) 日本語を覚えてもらい、コミュニケーションを図ろうと、昨年一一月から毎週日曜日に日本語ボランティア教室を開催しています。徐々にですが、学習者、小学校、公民館などの和が広がっています。
一方で、今年一二月の「保見ヶ丘国際交流センター」の正式発足に向け、準備している段階です。
丹羽さゆり(国際交流協会医療支援グループスタッフ) 国際交流協会内のボランティア組織「医療支援グループ」のスタッフとして活動しています。
在日ペルー人が国際交流協会に「どうしたら健康保険に入れるのか」という相談に来たのが医療支援グループ発足のきっかけです。
どのような希望があるのか、国際交流協会主催のフェスティバルでアンケートをとりました。外国人ごとにそれぞれ状況も違い、状況にあった活動を目指しています。
八月十九日には、実際に保見団地内で健康相談を実施しました。
来年は保健所でも(健康相談の)予算を組んでいただけるという話もあります。
野元弘幸(日本語教室スタッフ) 外国人住民の日本語教育を研究しています。八九年から九一年までブラジルに留学していました。
九二、九三年の二カ年、公団六区で日本語教室を開いていました。日系ブラジル人を対象に日本語能力(読み書き)の調査も実施しました。
職場の都合で一時期中断していましたが、昨年一一月から、ボランティアの皆さんと日本語教室を始めました。
日本全国を見渡してみても、これだけ外国人が集まっている地域も珍しいと思います。最近では全国的にみても、公営住宅に外国人が集まる傾向にあります。
保見団地が、日本の国際化が成功するかどうかという意味で、とても注目されています。住んでいる外国人とともに、地域の教育や文化をどうしていくのか、という意味でも試されていると思います。
ニバウド・デ・ソーザ・ホシャ(日本語教室受講生) 三年前に日本に来ました。その当時よりも良くなっていると思います。まだ、一部には素行の悪い人達もいますが、真面目な人達もたくさんいます。日本人の迷惑にならないよう暮らしています。
松井 これから日本語が話せるかどうかが、就労の条件になってくると思いますが、いかがですか。
ホシャ 日本語での面接はありませんでした。派遣会社は仕事が出来ればいいと思っています。
日本人と友達になれるので、日本語教室の受講を勧めていますが、仕事が忙しく、疲れているので、日本語教室に通いたくても通えない人がたくさんいます。
外国人住民を雇用している業者に日本語学習を義務づけてもらったらどうでしょうか。
松井 とてもいいことだと思います。派遣業者四八社中六社が、雇用促進協議会に加盟しています。まずは、加盟業者にお願いしていきたいと思います。
身近な所で、日本語教室を増やして行ければ、コミュニケーション不足も解消されるのでは。
藤原 コミュニケーション不足ということですが、豊田市の相談窓口は。
松井 豊田市では、毎週火曜日に相談窓口を開いていますが、知っている人はほとんどいないと思います。
団地内で相談窓口を開設してもらいたのですが。市役所まで出向くというのは、難しい。資格外就労者の医療負担などの、多様な問題が生じています。
丹羽 団地内で健康相談を実施することが必要です。平日昼間ならば協力できるという声があります。求められているのは、土日もしくは夜間の健康相談です。
埼玉県川口市では、保健所が土曜日に健康相談を実施しています。やる気にさせないとダメでしょう。
むろん、行政が実施する健康診断に出て来られない人もいます。フットワークを軽くし、行政と同時並行して、ボランティアレベルでの健康相談が求められています。
松井 需要はどうですか。
丹羽 需要は多いです。健康診断を受けさせていない職場も多くあります。問題だと思いますよ。どうやったら日本の健康保険制度に入れるのかを、母語で説明することも必要です。
愛知県豊橋市では、行政が外国人相談員を設け、保険制度の加入手続きの説明を行っています。豊田市の対応の遅れが目立ちます。
関 日本語教室では、生活相談も受けています。社会保険に入りたいのに、入れないがどうしたらよいのかという相談をよく持ちかけられます。豊田市からは、「働いているからそちらで入って下さい」と言われるそうです。外国人のみなさんは、どうすることも出来ず困っています。
保険に入れない人達の対応を考えざるを得ません。ボランティアだけでは対応しきれません。行政の問題だと思うのですが。
日本語教室には、クビにされたくないので、日本語を覚えたいという人もいます。企業は、なぜ自分たちで責任をもって日本語を教えようとしないのでしょうか。豊田市はトヨタ自動車に支えられている部分が多いと思います。下請け企業の中には、外国人で支えられている所も多いのではないでしょうか。
松井 企業が日本語を教えるという発想がなかったのでは。
関 もちろん誰か一人の責任という訳ではなく、みんなでネットワークをくみながら活動を展開していく必要があると思います。
丹羽 役所の事情で動くのではなく、たくさん声を集めて、伝えて行くしかないと思います。
野元 全国的にボランティアを中心に、日本語教室が開かれていますが、ボランティアだけでは限界があります。
外国人の日本語教育を公的機関が支援する必要があります。趣味、教養を広げるという問題ではありません。隣に住んでいる人とコミュニケーションがとれないという事態が起こっています。
社会教育という観点から、豊田市は遅れているという印象を持ちます。公民館講座で日本語教室を開講しているところがありません。
日本語教室を公的に保証する必要があります。困るのは地域なのです。いま、地域にそのしわ寄せが来ているといっていいでしょう。
教室の開講は、単に日本語を教えるということだけではなく、交流の場、コミュニケーションの場になります。
アジア系外国人が多い神戸市長田区の“長田区らしさ”は、外国人が多くて何か面白そうだということだと思います。
発想の転換が必要です。例えば、「保見ヶ丘ラテンタウン構想」みたいなものがあっても良いと思います。エスニック料理やサッカー教室など、保見に行けば何か魅力があるということです。
松井 ラテンタウン構想もわかりますが、私達「保見ヶ丘を明るくする会」の活動内容を知っていただきたいという気持ちが強いです。
外国人の方々に伝えて行く手段がありません。日本人の中でも、知らない人が多いと思います。
外国人と共生という意味で、公団保見ヶ丘自治区でも日系人の役員登用を考えたいと思います。
関 団地の中から日本人の流出を止めたいです。外国人がいるから問題が起きているとは思いません。自分たちの文化、暮らし方を見直す良い機会だと思います。
藤原 さきほどネットワークという話が出ました。「保見ヶ丘国際交流センター」は、まちづくりの掛け橋になると思うのですが。
関 そうですね。ネットワークをつないで行くのは、センターの役割だと思います。日系ブラジル人の中で、住民協会を立ち上げたいという話も出ています。もちろん、日本人だけのネットワークではなく、ブラジル人も含めたネットワークづくりです。
今までは、それぞれがバラバラで活動していたような気がしています。お互いに情報交換を深め、活動していきたいと思います。
将来的には、団地内だけでなく外からも人を呼べるようなフェスティバルを、外国人とともに開きたいと思います。
藤原 ありがとうございました。