981204-5 やはぎ論壇「保見団地問題を考える-日系外国人との共生目指す-」(文・松井正衛)

 ここ豊田市保見ヶ丘の通称・保見団地は、四つの自治区(県営保見・公団保見3ヶ丘・保見ヶ丘六区・保見緑苑)からなり、現在、入居戸数三一八一戸、約一一〇〇〇人が生活している豊田市随一のマンモス団地である。この二、三年は日系外国人が全国各地より仕事を求めて集まるようになり、今では三三〇〇人が生活している。保見ヶ丘住民の約三〇%が外国人であり、それが県営及び公団の賃貸住宅に集中している。
 

 日系人にとって保見ヶ丘は、仲間も多く日本語が話せなくてもポルトガル語が通用し、ブラジル商品も簡単に手に入り、学校でも日系人の児童が多いなどの、生活しやすい場所になっている。彼らのほとんどは、人材派遣業者を通じてトヨタ自動車の関連企業や下請け企業・孫請企業等に派遣されている。日本は少子高齢化社会を迎えており、特に“3K職場”や休日出勤・時間外労働等では、今後も益々日系人に頼らざるを得ない状況になると考えられる。
 

 さて今問題になっているのは、先日の本紙に取り上げられた通り、公団住宅が人材派遣会社の“寮”として利用されていることである。2DKの部屋に独身男性が四、五人で生活し、住民とのトラブルの種になっている。また言語や生活習慣の違いから発生するゴミ問題や騒音問題も深刻だ。更に不景気を反映してか、失業中の日系の若者達や未就学児童の一部による暴走行為や窃盗・傷害等の犯罪行為も多発している。日本人と日系外国人との間に深い溝が出来てしまった。
 

 悪いのは一部の若者であり、ほとんどの日系人は真面目に働こうとしている。自治区としては住民との深い溝を少しでも埋めるために、共生を目指した活動を積極的に展開している。コミュニティ活動として取り組んだ夏祭り事業がNHKのドキュメントとして放映され、ご覧になった方も多いと思う。日系外国人問題は保見ヶ丘だけにとどまらず、豊田市の上郷・平芝・宮上地区の県営住宅等にも及び、県内では豊橋・小牧市でも同様の問題を抱えている。
 

 保見ヶ丘四自治区から成る「保見ヶ丘を明るくする会」は、昨年加藤正一豊田市長に要望書を提出したが、具体的な対応策はまだ何も取られていない。豊田市も中核都市となり、国際交流を目指し外国との姉妹提携を盛んに推進しているが、市内で国際化が進み問題を抱えている“保見ヶ丘”を解決することが、国際交流としてもっと大事なことではないだろうか。そのためには県内外で同様の問題を抱える自治体とも協議し、解決への将来展望を豊田市自身が確立すべきではなかろうか。
 

 県住宅供給公社と住宅・都市整備公団は空き家を埋めることだけを考え、住民の願いを無視し無秩序に日系人を入居させ続けて来た。誰もが安心して暮らせる地域づくりのために大家としての責任を果たすべきである。入居後の管理が全くずさんなために発生しているトラブルも多い。公団と法人契約をしている人材派遣会社の責任も明確にし、生活マナーの指導徹底を図る必要がある。
 

 車の街豊田だからか、日系人の無免許運転・無保険の車との事故による泣き寝入り・放置車両や自動車部品の略奪・改造車両の横行などの目に余るケースが現実に出て来ている。豊田警察署も、事件の事後処理ばかりでなく、取締りと団地内のパトロールを強化して欲しい。
 

 最後に、日系人の労働力を必要とし、間接雇用によるメリットを最大限利用している各企業の責任は如何なものか。住民の迷惑と犠牲を見過ごしているのでは、誠に遺憾としか言いようがない。一九九〇年の入国管理法の改定から始まった日系人問題の解決には、各関係機関が現地の状況と推移をしっかり把握し、それぞれの役割と責任を果たすことが一番大事な事ではないでしょうか。


 まつい・せいえい 現在、保見ヶ丘四自治区から成る「保見ヶ丘を明るくする会」会長、豊田市保見ヶ丘在住。
 立命館大学法学部卒業、建設会社勤務。公団保見ヶ丘自治区区長、保見地区コミュニティ会議会長などを歴任。平成11年4月豊田市議選に立候補予定。
 
 

 


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